
今回は、日本バーベキュー協会が持つ日本代表チーム【ステーキジャパン】のメンバーで、2025年3月に開催された『SCA* World Championship』で世界2位を獲得した川井集平さんにお話を伺いました。
※SCA(Stake Cookoff Association)とは、世界で唯一のステーキクッキングの世界選手権を開催している組織で、毎年3月にアメリカ全土はもちろん、ヨーロッパ、南米、オーストラリア、アジアなど世界20カ国以上のステーキチャンピオンが集まる大会を、テキサス州フォートワースで開催しています。
SCAが設定する大会内容と審査方法:
1ポンドのリブアイビーフステーキをいかに美味しく上手に焼くかを競い合います。出来上がった料理の審査は、SCAが定めた講習をうけ特別に認定されたSCA公認ジャッジのみが行います。審査を厳正にするため、誰が提出したものかわからないようにブラインドジャッジが採用され、選手とジャッジは大会中面会はできない仕組みとなっています。
episode 01.
今回の大会について
私が住んでいるのが、四万十のすごい田舎なので、噂も早くて、帰国後翌日から仕事に出てましたが、地域の方にたくさん声をかけてもらいました。今年で3回目で、街の皆さんも大会に出ていることは知っている方も多いので、すごく喜んでもらえました。
最初に参加した3年前、頑張って日本代表に選ばれて来たのに50人中48位で、予選すら通過できませんでした。しかし今回は、今までやってきた中で一番のステーキができたと思っていましたし、その中で結果がついてきたのだと思っています。
大会終了直後から、日本のBBQ関係の友達、知り合いからたくさん連絡が来たり、周りの反応がすごくて、びっくりしました。それに今年のTOP15位の中でアメリカ国籍でない人は自分だけということも聞いて、改めてすごいことをしたんだと実感しました。
episode 02.
BBQとの出会い
2020年の5月に職場でもある『道の駅よって西土佐』で、四万十の食材をBBQというツールを使って全国に紹介しよう、という取り組みが始まりました。
最初は職場の取り組みに巻き込まれて担当の一人にされた‥くらいの気持ちでしたが、ここで日本バーベキュー協会と出会うことになりました。
その2ヶ月後には、BBQ協会が主催している『SCA ASIA大会』を四万十でやることになり、訳もわからず運営をすることになりました。
最初は、こんなことをして人が集まるのか?どんな効果があるのか?と取り組み自体も疑っていましたが、大会当日は本当にたくさんの人が集まってくれました。そこで今まで会ったことがないようなBBQ好きの方や、熱心な大会参加者と出会い、皆さんの好きなことに向かう姿勢やステーキを焼いている姿がとてもかっこよく見えて、自分もやってみたいと素直に思えました。
episode 03.
始まったアメリカへの挑戦
四万十大会のあと、すぐに岡山で大会があったのですが、勉強の為と、大会のジャッジとして参加しに行きました。でも前日の懇親会で、「明日は大会に出るんでしょ?」という話になっていき、お酒が入っていたこともあり、勢いで参加することになってしまいました。
当然、道具もなにも持っていないので、必要なものは周りの方に借りて出場したような状況でした。
結果としては、ちょっとかじった程度の知識しか無かったのでまったく太刀打ちできず、それがすごく悔しかったです。
それから自分で練習をするようになり、アメリカ人のYoutube等を、たくさん見て勉強を始めて、どんどん美味しいステーキを焼けるようになりたいという気持ちが強くなっていったことを覚えています。練習は、多いときは休日や仕事終わりなど、1ヶ月で20回以上ステーキを焼いていた時期もあります。
学生の時に10年のパスポートを取ったのですが、3年前に初めてアメリカの大会に出るときはパスポートは失効しているような状況でした。なのでBBQをやっていなかったら、アメリカに来ることもなかったと思います。
今年で3回目となりますが、とても優しい人が多い印象です。アメリカに来て関わる方がBBQ関係の人ばかりというのもありますが、日本チームとして大会に参加している事自体に喜んでくれているのがすごく伝わってきます。初年度から、初対面で英語も分からない私達に対しても、BBQについて教えてくれたり、見本を見せてくれたり。同じBBQを好きでいることをすごく喜んでくれているのを感じて、こちらもとても嬉しくなります。
好きなことが同じというのは、簡単に言語や国境を超えるということを実際に体験しましたし、本当にすごいことだと思いました。
また、大会会場では伊藤園さんから日本代表チームに『お~いお茶』を提供していただいたり、毎年、アメリカツアーを組んでいただくIACEさんなど、海外で頑張っている日本人はたくさんいるんだと刺激を受けました。
またチャンピオンシップに出て、今回届かなかった1位になりたいと言う気持ちはとても強いです。
実現するためには、2025年のアジアの大会で勝ち上り、日本代表にならないといけないので、日本の仲間たちと切磋琢磨して頑張りたいと思います。
大会の審査方法は、ブラインドジャッジといい誰が焼いたかわからないようになっていて、公平に判定しているところもとてもやりがいを感じています。
毎年、アメリカ大会が終わるとSNSで世界中のBBQ関係者のお友達が何十人も増えるんです!
日本人のフォロワーも増えたりするので、その方たちに自分のいる四万十を見てもらい、四万十のすばらしさを日本にも世界にも広めたいと思っています。
せっかくなので、BBQをやっているところに行って体験してみてほしいです。
BBQはメニューのひとつではなく、アメリカ人がとても大切にしている「おもてなしの文化」です。
自宅にホストとしてゲストを招き、おもてなしをすることがBBQの中の大切な要素で、日本の皆さんが思う「外で焼き肉をする」というバーベキューとは全く違うものです。そんなことができる環境にいるみなさんのことは、日本にいる私からすると、ほんとに羨ましいです。
僕は、たまたまBBQの中でも、ステーキというジャンルに興味が出て、好きになって、どんどんハマって、アメリカにまで行くことになりました。さらに、そこから友達もたくさん増えました。
興味関心のあることは人それぞれで、スポーツをする、推しチームを応援する、アニメに興味がある、数学の勉強が面白いなど、たくさんあると思います。まずは、その思いを大切にしてほしいのと、最初は恥ずかしいとか、勇気がいると思いますが、同じものを好きな人がいたら少し近づいてみると、そこから更に楽しい輪が広がっていくんじゃないかと思います。アメリカにいるからこそ出来ることを経験してもらいたいです。
〜 ご紹介 〜
しまんとリバーベキュープロジェクト
高知県四万十市西土佐地域にある10の事業者が集まり、地元の魅力をBBQというコミュニケーションツールを用いて紹介するコンソーシアムです。川井さんは『道の駅よって西土佐』のスタッフとしてプロジェクトに参加しており、お手軽に四万十の食材などでBBQのできる『しまんとリバーサイドBBQ』という施設の管理・運営をしています。
日本バーベキュー協会とは
日本でただ一人のバーベキューマスター&バーベキュープロデューサー 下城民夫氏が、2006年、その経験を活かし日本に本物のバーベキュー文化を作り出すという目的で日本初の『日本バーベキュー協会』を立ち上げる。
2007年には全国的にもユニークな検定で注目されている「バーベキューインストラクター検定」をスタート。
アメリカでも開催。バーベキュー検定の合格者は全国に26000名を越える(2024年現在)。